石井源信

 
 

 本学に昭和51年5月(28歳)に赴任して37年間が過ぎました。なんとか無事に卒業することができることになり胸をなでおろしているところです。本学は理工系の最高の大学だけに何ができるか、ただただ不安と緊張だけで過ごしてきたような気がします。

 前半の20年間は一般教育保健体育群に所属し、保健体育、健康科学や実技、実習の授業、自身の専門領域の研究活動そして、学生支援に関わる業務にかかわらせていただきました。保健管理センターの前にあった武道館を拠点として、旧体育館(現蔵前会館)、グラウンドでバドミントンの授業、テニスコートでの授業や課外はソフトテニス部指導に明け暮れていました。まわりからは「体育の先生はいいですね。自分の健康のために趣味と実益をかねて・・」と。非常勤の先生たちと授業後、テニスやバドミントンをともにプレーし、そのあと本学の名物「銀杏」をつまみに飲みかわしたのどかな時期があったことを懐かしく想い出しています。

 後半は平成8年に人文.社会科学の領域から理工学の分野までの文理融合をめざすユニークな研究科として立ち上げられた大学院社会理工学研究科に所属することになり、予想もしていなかった研究室を立ち上げることになりました。ぞっとする緊張感と責任感と大きな重圧を感じながら「心機一転」と気持ちを新たにしたのがついこの前のような気がします。専門教育でもなんとか本学に位置づけるべく、「もっと肩の力を抜いて!」と言い聞かせながらも大きく背伸びしすぎていたように思います。

 前半の一般教育で感じたことは、縁の下の力持ち的役割に徹することの大切さでした。大学における保健体育そして健康・スポーツ科目の必要性に関して必須か選択かを議論された時期がありましたが、理工系のトップをめざすエリート集団にとって健康や体力そしてタフな人間力には欠かせない科目であることを今あらたに確信しているところです。 

 後半の専門教育では、自身は教育学部や体育学部での教員と違うところは何かを模索しながら、やはり理工系の特徴を活かしたスポーツ科学なかでもスポーツ心理学をめざしてきましたが、まだまだ十分とはいえず、若い次世代に期待するばかりです。

 また、学生支援関連で思い出に残ることは、学生相談員をさせいただいていた頃、カウンセリング懇談会でどうも暗い話ばかりになりがちななかで総合理工学研究科の岡村哲至教授たちとよく飲みながら、テニスを楽しみながら真剣に懇談したことです。その成果として「スポーツ講座」が続けられていますが、今後さらに発展してほしく思います。

 最後に、お世話になった東工大、専攻、健康・スポーツ科目の先生や事務職員の方々には心よりお礼を申し上げます。また石井研究室では優秀でかつ心ある約40名の学生さんならびに居心地のいい研究室に恵まれ、定年を迎えることができたことを感謝いたします。そして手となり足となって何から何まで文句一ついわずにサポートしてくれた小谷泰則先生には感謝いたします。


                   平成25年3月 石井 源信


主な著書

編著「スポーツメンタルトレーニング教本」「スポーツ心理学の世界」「最新スポーツ心理学」など

編著「ソフトテニス指導教本」「ソフトテニスコーチ教本」「ソフトテニス指導マニュアル(ジュニア編)」

共訳「サッカーのメンタルトレーニング」


社会的活動

日本ソフトテニス連盟強化委員会医科学部会長

日本オリンピック委員会科学サポート部会心理班委員

国立スポーツ科学センター心理学研究室客員研究員(非常勤)

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス非常勤講師


主な資格

日本スポーツ心理学会認定スポーツメンタルトレーニング指導士

日本体育協会認定公認上級コーチ


最近のプロジェクト

「脳イメージングと3次元バーチャル空間を使い新しい予測判断トレーニングを開発する」

「アスリートのためのライフスキルプログラム開発およびその効果に関する実証的研究」(LSP研究会)

定年退職のあいさつ(記念論文集より抜粋)